FullDepth のメンバーそれぞれが仕事にかける想いを紹介していく「ストーリーズ」。第三回はFullDepthの代表取締役社長CEO兼共同創業者、伊藤昌平。幼い頃から想い描いてきた「自分で作ったロボットで深海魚を見に行きたい」という夢の実現に向けてひた走る、伊藤の想いとそれを支える仲間達について改めて語ってもらった。

FullDepth 創業から現在まで道のり

-今回はやっと伊藤さんの出番です!まずはFullDepthを創業してから現在に至るまでを改めて教えていただけますか?

はい、当社は2014年に会長の中内と私で設立した空間知能化研究所株式会社が前身となります。創業当初は、現在のように水中ドローン専業という訳ではなく、様々なロボットの受託開発を行なっていました。

-そうなんですね、では何がキッカケで水中ドローンを開発することになったのでしょうか。

当社のCOOであり、大学時代の友人である吉賀の存在が大きかったです。創業当初、吉賀はベンチャーキャピタルで働いていたのですが、個人的に事業について相談をしていました。その際、私が抱えていた気持ちのモヤモヤを感じ取っていたようで(笑)ある日「本当にやりたいことって何?」とハッキリと聞かれたんです。私はすぐさま小さいころからの夢だった「自分が作ったロボットで深海魚を見たい」という想いを口にしました。

-その深海魚というのは、深海探査プロジェクト(*1)でも追いかけているナガヅエエソのことですよね?

はい、そうです!FullDepthのロゴもナガヅエエソの姿をモチーフにしたり、初めて制作した水中ドローン(*2)の名前にもナガヅエエソに関係していたりと、とても当社にとっても関わりの深い魚になりました。

*1 深海探査プロジェクト ナガヅエエソチャレンジ(Tripod Fish Challenge) はこちらから。
*2 FullDepthとして初めて制作した水中ドローンはTripod Finderという名称であり、ナガヅエエソの英名であるTripod Fishを見つけにいくという意味が込められている。

もちろん多くの業界に水中を見たいと考えてらっしゃる方々がいて、事業性もあるということもリサーチしていました。具体的にはダムや港湾、または暗渠などでの点検業務、海洋調査や水産資源の養殖など、これからの日本に欠かせない多くの業界で水中を見たいというニーズが想像以上にあるなと感じていました。

それからすぐ、以前から温めていた水中ドローンの構想を実現するために事業プランを作成し、資金調達を実施しました。幸運なことに私のビジョンに共感してくださる方々から最初の開発費用をバックアップしていただくことができました。

そして、2016年夏に実証実験機としての水中ドローン「Tripod Finder」が完成しました。試作機の完成以降は多くの方々にご協力をいただきながら実証実験を重ね、2018年6月に製品版としてDiveUnit 300という水中ドローンのサブスクリプションサービスを開始することができました。

エンジニアとして、社長として

-試作機や製品版の開発でエンジニアとしての伊藤さんの役割は大きかった思いますが、その一方で社長として会社の組織体制を強化する必要もあったと思います。

そうですね。当社には現在は約20名のスタッフがいますが、2019年に追加の資金調達を実施してからは、開発チームはもちろん、会社として様々なポジションで個性豊かなメンバーが加わってくれています。

-社長としての仕事とエンジニアとしての仕事、二つの役割を掛け持つのは大変だと思いますが、どのようにされているのですか?

二つというよりは、会社を前に進めるためにはどんなことでもやります!(笑)ただ、やはり一人で受け持つことができる量には限界があるので、その時々で会社の成長に必要と思う役割を重点的に担いながら、信頼できるメンバーにどんどんバトンタッチをしていくようにしています。

例えば、今は4名の営業チームが日々、水中ドローンを様々なお客様に説明して回っていてくれますが、以前は開発も営業も自分自身も行なっていました。製品の改良をエンジニアとして続けながらも、会社の代表としての売り込みに回らなければならないということで大変な時期でしたね。ただ、直接お客様から要望を聞くこともできたので、製品開発のスピードを上げると言う意味でも、必要な時期だったと思っています。今はチームの体制も整ってきているので、会社の将来の構想を考えたり、多くの方々にビジョンを伝えていくこと。そういった視点で仕事をすることができています。

FullDepthに集まる個性豊かなメンバーと自由な働き方

-創業初期は伊藤さんの頑張りが大きかったわけですが、その後どのような方が入社されていますか?

弊社のメンバーはみんな良い意味でキャラが濃いです(笑)特に意図したわけではないのですが、フィールドセールスが体育会系のメンバーが多く、とても馬力のあるチームにまとまっています。例えば、チームリーダーは柔和な笑顔が印象的な人物なのですが、趣味でトライアスロンに出場して常に体を鍛えていたり、あとはレスリング経験者や前職がトレーニングジムの運営会社など、ある意味男子校みたいな一体感がありますね(笑)

もちろん会社全体としては男子校ではなくて、最近は広報として新たに女性社員が入社しました。彼女は働くお母さんで、子育てと仕事のバランスをとりながらのびのびと働いてくれています。弊社では働き方自体も可能な限りフレキシブルにしています。今後も、一人一人が力を発揮しやすい環境作りをできる限りしていきたいと考えています。

水中ドローンの進化

-水中ドローンも日々進化を遂げていると思いますが、改めて今後の展望を教えてもらえますか?

現在はとにかく様々な現場で使って頂き、フィードバックを受け、改良を積み重ねることが大事だと思っています。もちろん会社としての売り上げも重要ですが、この先のプロダクトの構想を作っていくためにも、様々な業界のニーズを現場から汲み取ってくることが大事だと考えています。

また、多くの業界に当社の水中ドローンについて理解して頂くためにも、まずは水中での目の役割、つまり「見る」という汎用的な機能に特化させて改良を続けています。最近だと、マルチナロビームソナーと言う音波で物体を検知する装置を本体に実装しました。こうすることで濁りや水質悪化の影響でカメラからの映像では目標物を視認できない場合でも、安定して物体の場所や構造を捕捉できるようになりました。

さらにより安定した水中での活動を行うために、GPSが使えない水中でドローン自身の位置を特定する機能の開発もしています。実現すれば、広い海域においても正確に速く目標物まで到達することが可能になります。技術的にはクリアできる見通しが立っているので、近いうちに実用化まで進められればと考えています。今後は「見ること」と、その先に出来ることの選択肢を増やしていくことでお客様の様々な課題に立ち向かっていきたいですね。

テクノロジーで海を「解放」する

-それでは最後に、今後の展望を教えてください。

私が最終的に目指しているのが「海を情報化する」ということです。言い換えると、テクノロジーを活用することで海という地球で最大のリソースを誰もが活用することができる手段を構築したいと考えています。

例えば、水産資源の養殖の現場では、魚の餌やり一つにしてもいまはまだ「長年の感」で判断しているところが多いのが実情です。養殖のベテランの方々だと、餌を生簀に投げ入れたときの魚の跳ねかたで健康状態を確認するなどその技術の習熟には多くの時間を要します。これが、生簀の中を実際に見て魚の状態を直にチェックできるようになれば、より効率的かつ安定的に養殖を行うことができるのではないでしょうか。

また、水産業の長期的安定性という側面から考えても、後継者の育成が行いやすくとも考えらえれます。農業の分野ではITが導入され始めていますが、水産業では水中という制約が付いて回るため、水中にアクセスするための「新しいインターフェース」が必要と感じています。

そのインターフェースの一番初めの部分として、「見る」ということが非常に重要だと思います。人間で言うところの「視覚」の部分ですね。地上では当たり前にできていることも水中では難しい。テクノロジーを使って海をそういった制約から解放し、水中と地上が同じように扱うことができるようになれば、その先に出来ることが大きく変わってくると思っています。人間が海のことをもっと知ることができるようになれば、深く地球を理解することに繋がり、これから先も永く、人類と地球が共存できる未来が実現できると信じています。