FullDepth Stories Vol. 1
ドローンファンド 大前 創希氏
毎回FullDepthメンバーの想いを紹介していく「ストーリーズ」。第3回では初めてFullDepthの事業を支える社外の方にインタビューを実施した。ドローン企業専門ファンド「ドローンファンド」の共同代表で、ご自身もドローンを活用した映像撮影を行う「ドローングラファー」として活躍されている大前創希氏。FullDepth共同創業者の吉賀と伊藤との出会いや出資に至るまでの経緯を熱く語ってもらった。
ドローンでしか見ることのできない、
非日常の世界
――本日はありがとうございます。初めての社外の方へのインタビューということで、FullDepthに深く関わりのあるドローンファンドの共同代表、大前創希さんにお時間を頂きました。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
よろしくお願いします。ドローン企業専門のファンド、「ドローンファンド」の共同代表として、スタートアップを中心に企業の成長を加速させるためのお手伝いをしています。新規の投資案件も担当しますが、今は特に投資をした企業の課題解決や企業同士を結びつけるためのパートナーシップ締結など、成長戦略の立案をサポートすることに力をいれています。
――なるほど、ファンドの共同代表の他にも、ドローングラファーとしてもご活躍されていますよね。
ドローングラファーはある種ライフワークみたいなもので。元々、写真や映像の撮影は好きで、仕事としても行なってきた経緯があります。人が感動するような情景や、普段は見ることのできない非日常とも言える絶景を撮影したいという、本能に近い欲求があって。そのなかで自分で撮れるものというと、自分の足で赴ける場所、もしくは飛行型のドローンを利用した撮影など、今は地上と空中であれば様々な場面でハイクオリティな写真や映像を撮ることができるようになりました。
――水中に関してはいかがですか?
水中に関してもスキューバダイビングで行ける範囲であれば、撮影範囲には含めることができるかな、とも思います。水中で活動するドローンに関しては、現在市場にあるコンシューマーモデルのドローンだとまだまだ撮影できる場所は限定されてしまうのかなと。特に海中には潮の流れもあり、小さくて軽量な水中ドローンだと、安定して滑らかな動きを行うことができずに、映像もフラフラしたものになってしまいます。撮影するからにはやはり人を感動させられるような、もしくは見ていて気持ちいいと思えるシーンを撮りたいと思っているので、それが実現できるのであれば多少の財力も厭わないと思っています。こんなことを言うとまた奥さんに怒られてしまいますが、、、(笑)
言語に依存しない
ノンバーバルコミュニケーションの重要性
――大前さんの映像や写真撮影へのこだわりといったものはどういったことがキッカケで生まれたのでしょうか?
ドローンファンドを立ち上げる前に、ITコンサルタントとしてウェブ関連の仕事をしていたのですが、ビジネスにおいてはクリエイティブ表現としての「見せ方」がとても大事だと強く感じていました。例えば、巨大なプラントの会社の案件を担当したときでした。単に全景を撮影してプラントを説明するのではなく、どうしたら綺麗にそしてクールに見せられるのかということを考えて、わざわざヘリでの空撮を行いました。その結果、人が普段目にすることのない、ハッと見入ってしまう映像を撮ることができ、ウェブを中心にコンテンツ化することでその会社のブランド力の向上に貢献することができましたね。
――確かに、写真や映像などのビジュアル表現は言葉に比べて見た人に大きなインパクトを与えることができ、ビジネスへの影響も大きいものがありますよね。
そうですね、私が特に意識して仕事をしているのが、一瞬でいかに見た人の頭の中に印象を残すことができるのか、ということです。ドローンファンドは日本のみならず、海外も含めて国際的に活動をしているので、言語に依存しないノンバーバルなコミュニケーション手法を多く取り入れるようにしています。例えば、初めて会う人々に対して自分の会社は何をしているのかを説明するには、言葉でひとつひとつ説明するのではなく、ウェブや映像などのビジュアル表現で伝えると、「お前の会社、クールだな!」なんて反応が一瞬で返ってきます。そこで与えた印象というのは、後々のビジネスにも強く関係していきますので、今後もこだわっていきたいポイントですね。
会社の私物化、
深海に対するリビドー
――ここからはFullDepthと大前さんの出会いについて少しお伺いしたいと思います。共同創業者の吉賀と伊藤、この二人と対面したときの印象はいかがでしたか?
すごく印象深く覚えています。伊藤さんはとにかく水中に長く居たい人なんだなと(笑)もう、水中に魂があって、海と関わっていること自体が伊藤さんにとって幸せを感じるということが至る所から伝わってきました。語弊があるかもしれないですが、伊藤さんは元々ビジネスを意識して水中ドローンの開発をスタートしているわけではないんですよね(笑)深海魚を見たいという想いが先にあって、そのために必要なロボットを作り、長く続けるためにビジネス化を模索して、さらに優れたドローンを作り。最終的には自分のやりたいことを達成するためにビジネスをしている、いい意味での「会社の私物化」しているんじゃないかなと思っています。特に深海に対しては強いリビドーを感じましたね(笑)もちろん結果として、世の中に必要とされている技術やソリューションを送り出しているわけなんですが、こうした極めて個人的なモチベーションというのは初期段階のスタートアップ企業にはとても重要なことだと思います。
吉賀さんはそんな伊藤さんをサポートしながら、今はまだきっちりとした枠組みがない水中ビジネスをいかに確立させるか、成長させるかを常に考えていて。伊藤さんの魂が水中に飛んでいっている間にしっかりと地に足をつけている人という印象があります。二人のコンビネーションというか、「絆」はとても感じました。大学時代の友人関係があるということで、お互いがお互いを必要としているいい関係性が構築されていると思いましたね。
スタートアップ成功の決め手は
強固な絆で結ばれたチームの存在
――大前さんがこれまでに数多くのスタートアップを見られてきた経験として、チームとしてのFullDepthはどうご覧になっていますか?
吉賀さん伊藤さんのコンビネーションもいいですし、それに共感する重要なメンバーも複数入ってきていて、とてもいい状態なんじゃないかと感じています。スタートアップが成功するか否かは、同じ目線で経営課題を共有できる優れたチームを組めるか組めないかが、大きな差になっていくと思います。一人でできることには単純に限界があります。一人よりは二人、二人よりは三人、四人とチームになることで可能性も広がりますし、時間をかけて関係性が強化されていくことで強固な絆となって会社の事業が課題に直面しても乗り越えていける力を得ることができると思っています。また、出資を検討する立場からみても、そういったチームが組めているかどうかは意思決定をするうえで大きなファクターともなります。
――なるほど、ドローンファンドとしてFullDepthに出資を決めるうえではどんなプロセスを経て決まっていったのですしょうか。
プロセスとしては、ドローンファンドの共同代表である千葉功太郎と大前創希の二人で基本的な意思決定は行っています。その後、投資検討委員会へ推薦をして最終的な判断をおこなっているのですが、その間、なるべくスムーズにかつスピーディに出資可否を決められるように、意思決定者の二人が出来るだけ現場を直接見るようにしています。
FullDepthに関して言えば、水中ドローンの試験潜航のために一緒の漁船に乗って三浦沖に行ったことを覚えています。そのときはあいにく、揺れや潮の流れが速い厳しい海況で、本当にこんな状況で安定した水中での航行ができるかと少々懐疑的にみている部分もありました。結果としてFullDepthが開発した水中ドローンは、そんな状況下でも期待した通りの性能を発揮して、安定した映像を確認することができ驚きました。
現場をしっかりと確認することで、技術的な成熟度はもちろん、チームとしてどういった課題意識をもって開発に取り組んでいるかという姿勢もみることができ安心しましたし、船を降りた直後に吉賀さんに「出資を前向きに検討したい」とお伝えもしました。ちなみに、一緒に行ったドローンファンドの二人は数分で船酔いになり、ずっと空を見上げていましたね(笑)
どんな課題も
ワンチームとして取り組むこと
――吉賀さん伊藤さんの二人も大前さんのタフさに驚いていました(笑)吉賀からはこれからいろいろご相談したいことがあるので、と言伝を預かっています。
もちろんです。むしろ、もっともっとぶつかってきて欲しいなというのが正直なところです(笑)ドローンファンドとして、投資先との関わり方で大切にしているのが、ハンズオンでもハンズオフでもなく、「ハンズイフ」という考え方です。これは一から全て教えるハンズオンでもなければ、全てを任せるハンズオフでもなく、会社としての主体性は尊重しながらも、何か課題にぶつかった時に解決の方法を一緒に考えていくという協調型のスタイルと言えるかと思います。
また、ドローン専門のファンドということで、出資先全てがチームの一員であるという状況ですので、定期的に出資先全てを対象としたカンファレンスも開催しています。多くのケースを学ぶこともできますし、また企業同士のコラボレーションも数え切れないくらい起こっています。ファンドに参画していただいている投資家の方々にも参加していただく機会もありますので、ドローンを活用した新しい事業展開に発展していくこともあります。これはドローン専門という我々にしかできない強みだとも思っています。
――最後にFullDepthへメッセージをお願いします。
吉賀さん伊藤さんを中心としてとても優れたチームが出来つつあると感じています。これからドローンが社会のインフラとして実装されていくにあたって、新しい技術を理解してもらうには相当の覚悟と粘り強さが必要になってきます。今がまさにその分水嶺のタイミングかと思います。顕在化している社会課題を少しずつ解決していくためにも、出来る限りのサポートをしたいと思っていますので、一緒に頑張っていきましょう!