FullDepth Stories Vol. 4 対談
神奈川県水産技術センター 相模湾試験場 専門研究員 鎌滝裕文氏 × 取締役 伊藤昌平
産業用水中ドローンDiveUnit300は、
相模湾の漁業をどのように支えているか
対談:鎌滝裕文氏(神奈川県水産技術センター 相模湾試験場 専門研究員)×
伊藤昌平(株式会社 FullDepth 取締役/共同創業者)
株式会社 FullDepthと神奈川県水産技術センター 相模湾試験場は、水中ドローンが完成する以前の2017年頃からのおつきあい。
海中で試験運転する際などに多大な協力をいただきましたが、今回の対談のはじめに、改めて業務内容を教えていただきました。
「漁業者さんが安定して魚を獲れるように、さまざまなサポートをしている。
特に重要なのが定置網の保護。強い海流で網が破れたり、ロープが切れることがある。そういった被害をどうすれば低減できるか探求するために、大きな水槽で海流をシミュレーションしたり、空と海両面でドローンを利用してメンテナンスの軽減化を図っている」と鎌滝裕文氏(以下、鎌滝氏)。
また、藻場(海藻のある場所)が消滅する磯焼け対策も欠かせないそうです。
「藻場は魚が産卵する場であり、アワビやサザエの餌場にもなるため、海のゆたかさの指標になる。アイゴやガンガゼが原因だとわかっているので漁業者さんと駆除したり、復元させるためにあらゆる方法を探っている」
調査の一環で、市場から定期的に水揚げ量のデータを入手しているという鎌滝氏に対して、伊藤昌平(以下、伊藤)は「どんな変わった魚がいるか」と質問。それに対し、鎌滝氏は「データ上ではわからないが、現場に行くと意外な魚を見ることも多い。小田原ではマンボウが上がっていたり、カジキは入っていたこともある」と回答。伊藤を大いに驚かせました。
現場で、DiveUnit300がどのように役立っているかという質問には「台風通過後などの網の被害状態を調査したり、藻場の破損状況を知るために稼働している。以前は“海中を知るには潜ってなんぼ”と言われたが、いい映像が撮れるのであれば機械が代替しても問題ない。
潜る時間や深さの面で人間には限界があり、機械の性能がそれを上回っている。もちろん人間が実際に目視する正確性も無視できないので、両方を上手く使いわけることが重要ではないか」とお答えいただきました。
最後に、これからの水中ドローンに期待することを聞いたところ、「より操作が簡単になったり、破損状況の把握だけでなく、具体的に定置網を補修できるようになるといい。また、定期的・自動的に海中を回遊して網の状況をリポートしてくれる機能があるとありがたい」とのこと。
伊藤は「神奈川県水産技術センター 相模湾試験場さんには開発の初期段階から、製品を育てていただいた面がある。ニーズを実現することで水中ドローンも進化する。がんばってお応えしたい」と返答。
技術の進化とゆたかな海を守るために今後も協力しあうことを約束しました。
神奈川県水産技術センター 相模湾試験場
富山湾、駿河湾とともに日本3大深湾に数えられる相模湾の漁場環境を守りながら、より活力のある漁業創出をサポートするために、先端技術を活用した水産工学研究を主体にさまざまな研究開発を推進。特に、現場での調査と回流水槽実験を組み合わせて行う定置網等漁具の改良や急潮による定置網被害の防止策の開発を通じて、沿岸漁業の大黒柱である定置網漁業の振興に寄与している。